かつかつたり しゃじょうのゆうじん
戞々たり 車上の優人

冒頭文

まことに、人間の遭遇ほど、味なものはない。先代片岡仁左衛門を思ふ毎に、その感を深くする。淡々しい記憶が、年を経て愈濃やかにして快く、更に何か、清い悲しみに似たものを、まじへて来るやうな気がしてゐる。役者なんぞに行き逢うて、あんな心はずみを覚えたと言ふことは、今におき、私にとつては、不思議に思はれる程である。年から謂つても、十四五—六の間、純と言へば純、だが上(ウハ)ついたと言へば、又少年らしくない

文字遣い

新字旧仮名

初出

「日本演劇 第四巻第八号」1946(昭和21)年9月

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日