やまのしもつきまい ――はなまつりかいせつ――
山の霜月舞 ――花祭り解説――

冒頭文

まだあの時のひそかな感動は、消されないでゐます。小正月を控へた残雪(ハダレ)の山の急斜面、青い麦の葉生(ハヾ)えをそよがしてゐた微風、目ざす夜祭りの村への距離を遠く感じさせる笛の響き、其後幾度とも知れぬほど、私どもの花祭りにあひに出かける心の底には、此記憶がひろがつて居るのです。五年ほど此方、初春にさへなると、三・信・遠、三州の境山へ、ものにおびかれた様になつた訣は、この「花祭り」の作者早川さんが

文字遣い

新字旧仮名

初出

「民俗芸術 第三巻第三号」1930(昭和5)年3月

底本

  • 折口信夫全集 21
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年11月10日