むらでみたくろかわのう
村で見た黒川能

冒頭文

黒川能東京公演に先だつこと二个月、私は偶然あの村(黒川村)に行き合はせて能及び狂言を見ることが出来た。(本誌前号誌上で話した通りである。)そこで上京公演の日も近いといふことを聞いた時、私は、これが果して東京の目の肥えた、しかも高ぶつた能の常連に私共の得たやうな深い感銘や同感を持たせられるかどうかと、黒川村の舞台、能役者その他の敬虔な気分に刺戟された共感から危んだ。しかし東京公演に対する能楽批評家の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「能楽画報 第三十一巻第十一号」1936(昭和11)年11月

底本

  • 折口信夫全集 21
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年11月10日