にほんぶんがくにおけるひとつのしょうちょう |
| 日本文学における一つの象徴 |
冒頭文
一 しゞまの姫 父君早世の後、辛い境涯が続いた。物豊かに備つた御殿も、段々がらんとした古屋敷になつて行く。其だけに、教養を積むこともなく、そんな中で唯大きくなつたと言ふばかりの常陸の姫君、家柄は限りもなく高かつた。だが、世馴れぬむつゝりした人のよいばかりの女としか育ちやうがなかつた。其うへ、わるいことには、色の抜けるほど白い代りに、鼻がぬうとして居て、其尖が赤かつた。髪の黒々と長かつたに繋らず、鼻
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新日本 第一巻第六号」1938(昭和13)年6月
底本
- 折口信夫全集 21
- 中央公論社
- 1996(平成8)年11月10日