ラマのゆくえ |
| 喇嘛の行衛 |
冒頭文
一 拉薩(ラッサ)の街は賑かであった。 勿論それは毎日毎日観飽きている賑かさには相違ないが、しかし同時に其(その)賑かさは新来の旅行客(きゃく)を喜ばすに足る大変珍奇(めずらし)い賑かさでもあった。市(まち)の真中に山のように喇嘛(ラマ)の宮殿が聳えている。瑪瑙(めのう)と玻璃(はり)と大理石とで築き上げられた大宮殿は朝陽夕陽に色を変えて西蔵(チベット)国民ばかりでなく原始仏教の信仰者——ト
文字遣い
新字新仮名
初出
「秘密探偵雑誌」1923(大正12)年8月
底本
- 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
- 作品社
- 2005(平成17)年9月15日