スペインのこい
西班牙の恋

冒頭文

一 熱病やみか狂人か 私の負傷(てきず)は癒えなかったけれど、故郷(くに)を出てから六月目に、それでもマドリッドへ帰って来た。 私は誰にも逢わなかった。又逢いたいとも思わなかった。しかし、親友のドン・ムリオだけには逢って見たいような気持がした。 「カスピナに逢うのも悪くはない。私は誰でも構わない。慰めてくれる人が欲しいのだ」 ドン・ムリオの一人の妹、十九のカスピナが久しい前から、私を愛して

文字遣い

新字新仮名

初出

「新趣味」1923(大正12)年1月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日