もくげきしゃ
目撃者

冒頭文

ミラは何(ど)うしても眠れなかった。 夜も更(ふ)けて真夜中を少し廻った頃だったが、二階では彼女の息子のウィリアムと嫁のエフィが先刻(さっき)から喧嘩を続けているので、ミラは一時間余りも床の中で眼をぱちくりさせていた。彼女はウィリアムが腹を立てたが最後、手に負えぬことを知っているだけに余計心配でならなかった。彼女の耳にはウィリアムが床をばたばたさせながら、切(しき)りに喚いている声や、エフィの

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵」1931(昭和6)年10月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日