とうぎゅう
闘牛

冒頭文

一 明日は闘牛の初日というのでコルドバの町は賑わっていた。 闘牛場に近い旅館の一つ——「六人の若い海賊」と呼ばれる広大な旅館の一つの部屋に一人の若者が宿を取った。商人とも見えず官吏とも見えず、と云って勿論軍人でも無い得体の知れない人物で服装なども醜かった。それで、旅館の支配人はボーイに眼くばせを呉(く)れて置いて、ホテル中一番貧弱な室(へや)へ不性無性案内したのであった。 そうして置いて

文字遣い

新字新仮名

初出

「新趣味」1922(大正11)年12月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日