こくじはんのゆくえ ―はごくのししあかいかげあき―
国事犯の行方 ―破獄の志士赤井景韶―

冒頭文

一 石川島監獄の内(なか)は陰森として暗らかった。 「……どうも夫(そ)れは宜(よ)くあるまい。私(わし)には何(ど)うも賛成出来ぬ。……それは残念には相違あるまい。泥棒をしたというのでは無く、いずれも国家の行末を案じ、一片耿々(こうこう)の志を以(もっ)て天下の為(た)めに大事を行い、その結果捕われて幽囚されたのじゃから、俯仰天地に恥ずる所は無く、従って捕われて自由を奪われた事は無念であるに

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1925(大正14)年1月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日