おくさんのいえで
奥さんの家出

冒頭文

一 年増女の美しさは、八月の肌を持っているからだ。 ああ小径には凋(しお)るる花残(のこ)んの芳香を上げている。「よろしゅうございます、お話ししましょう。が、それ前に標語を一つ、お話しすることにいたしましょう。『心にゴロン棒の意気を蔵し、顔に紳士の仮面をくっつけ、チャップリンの足どりで歩いたら、人生めったに行き詰まらない』と。……私のための標語なので。……で、お話しいたしましょう。聞いて下さ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1927(昭和2)年7月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日