にくじきのせつ
肉食之説

冒頭文

天地の間に生るゝ動物は肉食のものと肉を喰はざるものとあり。獅子、虎、犬、猫の如きは肉類を以て食物と爲し、牛、馬、羊の如きは五穀草木を喰ふ。皆其天然の性なり。人は萬物の靈にして五穀草木鳥魚獸肉盡く皆喰はざるものなし。此亦人の天性なれば、若し此性に戻り肉類のみを喰ひ或は五穀草木のみを喰ふときは必ず身心虚弱に陷り、不意の病に罹て斃るゝ歟、又は短命ならざるも生て甲斐なき病身にて、生涯の樂なかるべし。古來我

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 福澤諭吉全集 第20卷
  • 岩波書店
  • 1963(昭和38)年6月5日