けんきょうじゅなん
剣侠受難

冒頭文

この捕り縄は ポンと右手がふところへはいり、同時に左手がヒョイとあがった。とたんに袖口(そでぐち)から一条の捕(と)り縄(なわ)、スルスルと宙へ流れ出た。それがギリギリと巻きつこうとした時、虚無僧(こむそう)は尺八をさっと振った。パチッと物音を立てたのは、捕り縄がはねられたに相違ない。がその時はその捕り縄、ちゃアんとふところへ手(た)ぐられていた。 東海道の真っ昼間、時は六月孟夏の頃、あんま

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

底本

  • 剣侠受難(下)
  • 国枝史郎伝奇文庫、講談社
  • 1976(昭和51)年4月12日