きょうのなつげしき
京の夏景色

冒頭文

京都の街も古都というのはもう名ばかりで私の幼な頃と今とではまるで他処の国のように変ってしまってます。これは無理のないことで、電車が通り自動車が走りまわってあちこちに白っぽいビルデングが突立っている今になって、昔はと言っても仕様のないのは当りまえのことでしょう。加茂川にかかっている橋でも、あらかたは近代風なものに改められてしもうて、ただ三条の大橋だけが昔のままの形で残っているだけのことです。あの擬宝

文字遣い

新字新仮名

初出

「塔影」1939(昭和14)年8月号

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日