もやのかなた ――げんだいふうぞくびょうしゃへのたいぼう――
靄の彼方 ――現代風俗描写への待望――

冒頭文

心忙(こころせわ)しい気もちから脱れて、ゆっくり制作もし、また研究もしたいと年中そればかりを考えていながら、やはり心忙しく過ごしています。そんならそれで、その心忙しい程度に何か出来るかと申しますと、一向何もかもハカどらないのには、自分ながら愛想がつきます。世間の作家たちのことは、あまり知らない私のことですから、どんなものかわかりませんが、私としては、年から年中、あれも描かんならん、これもこうと考え

文字遣い

新字新仮名

初出

「大毎美術 第十一巻第八号」1932(昭和7)年8月

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日