おさなきころのおもいで
幼き頃の想い出

冒頭文

古ぼけた美 東京と違って、京都は展覧会を観る機会も数も少のうございますが、私は書画や骨董の売立のようなものでも、出来るだけ見逃さないようにして、そうした不足を満たすように心掛けて居ます。そうして、そのような売立なぞを観に参りまして、特に興味を惹かれますのは、評判の呼び物は勿論でございますが、それよりも片隅に放擲されて、参観者の注視から逸して淋しく蹲(うずくま)って居る故も解らぬ品物でございま

文字遣い

新字新仮名

初出

「塔影」1933(昭和8)年5月

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日