えだけ
絵だけ

冒頭文

ほかのことはテンとあきまへん。家のことも何もほったらかしで、どもならんのどす。絵だけです。絵のことを考えるだけです。 熱心なことは誰方にも負けんつもりでおりますが、写生は若い時分からようしました。今のように乗物の便利な時代と違いますから、二里でも三里でも歩いて行くのです。ガタ馬車に乗るというても何処にもあるというわけでありませんさかえな。足拵(ごしら)えを厳重にして、男の方と一緒に行くの

文字遣い

新字新仮名

初出

「美術評論」1937(昭和12)年10月号

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日