「そうしあらい」をかいて
「草紙洗」を描いて

冒頭文

○ わたくしの夢幻の国、思慕の華、それはつねにこの世の芸術の極致の境にひろがっている能楽です。わたくしは能楽をこそ人間界における芸術への一と筋辿るべき微妙な路だと思っています。 わたくしがこんどの文展に出品したのは能楽にある小町の“草紙洗(そうしあらい)”ですが、しかしこれは能楽そのものをそのままに取ったのではありません。小町の描出を普通の人物に扱ったものですから、画面の小町は壺織

文字遣い

新字新仮名

初出

「大毎美術 第十六巻第十一号」1937(昭和12)年11月

底本

  • 青眉抄・青眉抄拾遺
  • 講談社
  • 1976(昭和51)年11月10日