ヒトラーのけんぜんせい
ヒトラーの健全性

冒頭文

ヒトラーが、未来派の絵画を罵倒した記事を見て、ヒトラーらしいなと思った。 そうしてヒトラーが画家として立ったなら、むしろ穏健な、さりとて古くない、ポストアンプレッショニストとして彩管を揮(ふる)ったことだろうと思った。 未来派は、表現派や立体派や構成派などと共に、第一次世界戦争中に起こった、極わめて革命的の流派で、其処(そこ)には絵画としての伝統は、ほとんど片鱗さえ見ることが出

文字遣い

新字新仮名

初出

「外交」1940(昭和15)年9月2日

底本

  • 国枝史郎歴史小説傑作選
  • 作品社
  • 2006(平成18)年3月30日