なごやのこさかいふぼくし
名古屋の小酒井不木氏

冒頭文

故小酒井不木氏は名古屋市に於ける寵児であった。あらゆる会合へ引っ張り出され、さまざまの講演会へ引っ張り出され、驚くばかりに多方面の人に、訪問をされ、氏に於いてもいろいろの人を訪ねた。新愛知新聞社や名古屋新聞社や、名古屋毎日新聞社などでは、氏を殆(ほとん)ど引っ張り凧にした。かと思うと氏は素人の芝居などの、舞台監督をやられたり、キャフェーへ出かけて談笑したり、諸方面の歓迎会や送別会などへ、常に出席を

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1929(昭和4)年6月増大号

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日