たいしゅうものすんかん
大衆物寸観

冒頭文

中里介山氏の「大菩薩峠」は、実に素晴らしい作である。大デュマなんか飛び越している。だがユーゴーを持って来るのは、まだ少し早いかも知れない。机龍之介の性格描写は、前古未曾有といっていい、筋の通った登場人物が、廿(にじゅう)人ぐらいはあるだろうが、それぞれクッキリと描き分けた手際は、将(まさ)に巨匠といっていい。龍之介と対抗すべき人物は、新思想家の駒井能登守であるが、洵(まこと)に立派に描かれている。

文字遣い

新字新仮名

初出

「名古屋新聞」1926(大正15)年1月6日

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日