こさかいさんのことども
小酒井さんのことども

冒頭文

小酒井さんが長逝されました。私はボンヤリしています。同じ名古屋に住んでいたため特に親交があったからです。 医学者として大家であり、探偵文学者として一流であったことは世間周知のことと思いますが、私の知っている幾人かの実業家は小酒井さんのことをこのように申して居りました。 「小酒井さんは大事業家の素質を持っています。あの人が病身だということは如何にも残念です。健康でさえあったら実業の方

文字遣い

新字新仮名

初出

「猟奇」1929(昭和4)年6月

底本

  • 国枝史郎探偵小説全集 全一巻
  • 作品社
  • 2005(平成17)年9月15日