あかげっと しなあちこち
赤げっと 支那あちこち

冒頭文

船中で(一) 僕達夫妻が支那見物をするべく秩父丸で神戸を出帆したのは四月の十九日の正午だった。一等船客を、秩父丸は一万七千頓(トン)で、米国通いの船の中でも特に優秀なものだそうだが随分よかった。 同勢は二十三人だった。 本来僕は、この船で上海などへ行くより先に、大連へ行かなければならなかったのだ。と云うのは大連の満洲日報社との取引関係があったから。 僕も然(

文字遣い

新字新仮名

初出

「満州日報 夕刊」1931(昭和6)年5月18日~6月5日

底本

  • 国枝史郎歴史小説傑作選
  • 作品社
  • 2006(平成18)年3月30日