あかさかじょうのからくり
赤坂城の謀略

冒頭文

一 (これは駄目だ) と正成(まさしげ)は思った。 (兵糧が尽き水も尽きた。それに人数は僅か五百余人だ。然るに寄手(よせて)の勢と来ては、二十万人に余るだろう。それも笠置を落城させて、意気軒昂たる者共だ。しかも長期の策を執(と)り、この城を遠征めにしようとしている。とうてい籠城は覚束ない) そこで、正成は将卒をあつめ、しみじみとした口調で申し渡した。 「この間は数箇度(す

文字遣い

新字新仮名

初出

「日の出」1935(昭和10)年6月

底本

  • 時代小説を読む 城之巻
  • 大陸書房
  • 1991(平成3)年1月10日初版