しごとしてのにほんご
詩語としての日本語

冒頭文

酩酊船 さてわれらこの日より星を注(スヽ)ぎて乳汁色(チヽイロ)の 海原の詩(ウタ)に浴しつゝ緑なす瑠璃を啖(クラ)ひ行けば こゝ吃水線は恍惚として蒼ぐもり 折から水死人のたゞ一人(ヒトリ)想ひに沈み降り行く 見よその蒼色(アヲグモリ)忽然として色を染め 金紅色(キンコウシヨク)の日の下にわれを忘れし揺蕩(タユタヒ)は 酒精(アルコル)よりもなほ強く汝(ナレ)が立琴(リイル)も歌ひえ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代詩講座 第二巻」1950(昭和25)年5月

底本

  • 折口信夫全集 12
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年3月25日