けいようしのろん ――ごび「し」のはっせい――
形容詞の論 ――語尾「し」の発生――

冒頭文

文法上に於ける文章論は、非常に輝かしい為事の様に見られてゐる。其が、美しい関聯を持つて居る点に於いて、恰、文法の哲学とでも言ふ様に、意味深く見られてゐるやうだ。私は常に思ふ。文章論は言語心理学の領分に入れるべきもので、文法から解放せられなければならない。文法は結局、形式論に初つて形式論に終る事を、覚悟してかゝらなければならないのである。総ての学問のうちに、最実証的でなければならぬ筈の文法にして、而

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東洋語学乃研究」1932(昭和7)年12月

底本

  • 折口信夫全集 12
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年3月25日