はっけんでんだんよ
八犬伝談余

冒頭文

一 『八犬伝』と私 昔は今ほど忙(いそが)しくなくて、誰でも多少の閑(ひま)があったものと見える。いわゆる大衆物はやはり相応に流行して読まれたが、生活が約(つま)しかったのと多少の閑があったのとで、買うよりは貸本屋から借りては面白いものは丸写しか抜写しをしたものだ。殊に老人のある家では写本(しゃほん)が隠居仕事の一つであったので、今はモウ大抵潰(つぶ)されてしまったろうが私の青年時代には少し

文字遣い

新字新仮名

初出

「南総里見八犬伝 下」日本名著全集刊行会、1928(昭和3)年

底本

  • 南総里見八犬伝(十)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1990(平成2)年7月16日