がくしゃあんしんろん
学者安心論

冒頭文

学者安心論 店子(たなこ)いわく、向長屋(むこうながや)の家主は大量なれども、我が大家(おおや)の如きは古今無類の不通(ふつう)ものなりと。区長いわく、隣村の小前(こまえ)はいずれも従順なれども、我が区内の者はとかくに心得方(こころえかた)よろしからず、と。主人は以前の婢僕(ひぼく)を誉(ほ)め、婢僕は先(せん)の旦那を慕う。ただに主僕の間のみならず、後妻をめとりて先妻を想うの例もあり。親愛

文字遣い

新字新仮名

初出

「学者安心論」1876(明治9)年4月

底本

  • 福沢諭吉教育論集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1991(平成3)年3月18日