まんようびとのせいかつ
万葉びとの生活

冒頭文

一 飛鳥の都以後奈良朝以前の、感情生活の記録が、万葉集である。万葉びとと呼ぶのは、此間に、此国土の上に現れて、様々な生活を遂げた人の総べてを斥(さ)す。啻(ただ)に万葉集の作者として、名を廿巻のどこかに止めて居る人に限るのではない。又記・紀か、類聚歌林か、或は其外の文献にでも、律語の端を遺したらう、と思はれる人だけをこめて言ふのでもない。此時代は実は、我々の国の内外(ウチト)の生活が、粗野から優

文字遣い

新字旧仮名

初出

「白鳥 第一・二・三・四号」1922(大正11)年1、2、5、7月

底本

  • 折口信夫全集 1
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年2月10日