ほうげん
方言

冒頭文

○くびだけ 今は方言と言はれぬ語であるが、くびだけは首ばかりが水面に出てゐる様子で、沈湎・惑溺の甚しい事を言ふのだ、と思うてゐた処、大阪天満女夫池に、妻を追うて入つた夫の歌と言ふのに「水洩らぬ契りの末は首たけに思ひしづみし女夫池かな」極めて要領を得ぬ物であるが、首長(ダケ)とは着長(キタケ)に対した語で、頭をもこめた長(タケ)の義であらう、と思ひあたつた。首が出る段でなく、ずんぶりつかつて了ふこと

文字遣い

新字旧仮名

初出

「土俗と伝説 第一巻第一―三号」1918(大正7)年8~9月

底本

  • 折口信夫全集 3
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年4月10日