にょうぼうぶんがくからいんじゃぶんがくへ こうきおうちょうぶんがくし
女房文学から隠者文学へ 後期王朝文学史

冒頭文

一 女房歌合せ 数ある歌合せのうちに、時々、左の一の座其他に、女房とばかり名告つた読人(ヨミビト)が据ゑられてゐる。禁裡・仙洞などで催されたものなら、匿名の主は、代々の尊貴にわたらせられる事は言ふまでもない。公家・長上の家で興行せられた番(つがひ)の巻物なら、其処の亭主の君の作物なる事を示してゐるのである。此は、後鳥羽院にはじまつた事ではなかつた。かうした朗らかな戯れも、此発想競技と、女房との間

文字遣い

新字旧仮名

初出

「隠岐本新古今和歌集」1927(昭和2)年9月

底本

  • 折口信夫全集 1
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年2月10日