たんかほんしつせいりつのじだい まんようしゅういごのかふうのみわたし
短歌本質成立の時代 万葉集以後の歌風の見わたし

冒頭文

一 短歌の創作まで 短歌の形式の固定したのは、さまで久しい「万葉集以前」ではなかつた。飛鳥末から藤原へかけての時代が、実の処此(この)古めいた五句、出入り三十音の律語を意識にのぼせる為の陣痛期になつたのである。 囃し乱(ヲサ)めの還し文句の「ながめ」方が、二聯半に結著したのも此頃であつた。さうして次第に、其本歌(モトウタ)なる長篇にとつて替る歩みが目だつて来た。記・紀、殊に日本紀、並びに万葉の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「『万葉以後』解説」1926(大正15)年12月

底本

  • 折口信夫全集 1
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年2月10日