おりくちといふみょうじ
折口といふ名字

冒頭文

折口といふ名字は、摂津国西成郡木津村の百姓の家の通り名とも、名字ともつかずのびて来た称へである。 木津村は今、大阪市南区(現在更に浪速区)木津となつた。所謂「木津や難波の橋の下」と謡れた、鼬(イタチ)川といふ境川一つを隔てゝ、南区難波、即、元の難波村と続いてゐる。東は今宮、西は南(ミナン)町と言ふ、かの渡辺(ワタナベ)で通つた、えた村である。此二つの村との間には、十年前までは畑も見られたが、今は

文字遣い

新字旧仮名

初出

「土俗と伝説 第一巻第二号」1918(大正7)年9月、「土俗と伝説 第一巻第四号」1919(大正8)年1月

底本

  • 折口信夫全集 3
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年4月10日