ごえもんとしんざ
五右衛門と新左

冒頭文

一 「大分世の中が静かになったな」 こう秀吉が徳善院へ云った。 「殿下のご威光でございます」 徳善院、ゴマを磨り出した。 「ところが俺は退屈でな」 「こまったものでございます」 「趣向は無いか、変った趣向は?」 「美人でもお集めになられては?」 「少々飽きたよ、実の所」 「それに淀殿がおわすので」顔色を見い見いニタリとした。 「うん淀か、可愛い奴さ」釣り込まれ

文字遣い

新字新仮名

初出

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

底本

  • 蔦葛木曾棧
  • 桃源社
  • 1971(昭和46)年12月20日