ゆきまつりのめん
雪まつりの面

冒頭文

一昨々年の初春には、苦しい目を見た。信州下伊那の奥、新(ニヒ)野の伊豆権現の雪祭りに、早川さんと二人で、採訪旅行をしたことであつた。さうして、一週間といふもの完全に、小忌人(ヲミビト)の様な物忌みをして、村の神事役の人と共に一つになつて、祭儀の観察をさせて貰うてゐた。其揚句が、ちよつとの行き違ひから、村の大勢の人たちに反感を催されて、私の頭に、消防組の鳶口の一撃位は、来さうなけはひを感じた。あんな

文字遣い

新字旧仮名

初出

「民俗学 第一巻第四号」1929(昭和4)年10月

底本

  • 折口信夫全集 3
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年4月10日