まじないのいちほうめん
まじなひの一方面

冒頭文

まじなひ殊に、民間療法と言はれてゐるものゝ中には、一種讐討ち療法とでも、命(ナヅ)くべきものがある様である。蝮に咬まれた時は、即座に、其蝮を引き裂いて、なすりつけて置きさへすればよいとか、蜂をむしつて、螫された処に擦り込んで置かなくてはならぬ、など言ふのが、其である。 幼い心を持つてゐた昔の人にとつては、人を悩し苦める毒を、身内に蓄へてゐる毒虫などが、どうして、自身其毒にあたらぬだらうと言ふこと

文字遣い

新字旧仮名

初出

「土俗と伝説 第一巻第一号」1918(大正7)年8月

底本

  • 折口信夫全集 3
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年4月10日