さじきのふるいかたち
桟敷の古い形

冒頭文

此字は、室町の頃から見え出したと思ふが、語がずつと大昔からあつたことは、記紀の註釈書の全部が、挙つて可決した処である。言ふまでもなく、八俣遠呂知対治(ヤマタノヲロチタイヂ)の条に、記・紀二つながら、音仮名で、さずきと記してゐる。それより後の部分にも、神功の継子の二皇子、菟餓野(ツガヌ)に祈狩(ウケヒガリ)して、各仮庪(サズキ)にゐると、赤猪が仮庪に登つて、麑坂(カゴサカ)麑坂(ノ)王を咋ひ殺した(

文字遣い

新字旧仮名

初出

「土俗と伝説 第一巻第二号」1918(大正7)年9月

底本

  • 折口信夫全集 3
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年4月10日