ぼんおどりとまつりやたいと
盆踊りと祭屋台と

冒頭文

一 盂蘭盆と魂祭りと 盆の月夜はやがて近づく。広小路のそゞろ歩きに、草市のはかない情趣を懐しみはするけれど、秋に先だつ東京の盂蘭盆(ウラボン)には、虫さへ鳴かない。年に一度開くと言はれた地獄の釜の蓋は一返では済まなくなつた。其に、旧暦が月齢と名を改めてからは、新旧の間を行く在来(アリキタ)りの一月送りの常識暦法が、山家・片在所にも用ゐられるやうになつたので、地獄の釜の番人は、真に送迎に遑なきを嘆

文字遣い

新字旧仮名

初出

「大阪朝日新聞 附録」1915(大正4)年8月29日

底本

  • 折口信夫全集 2
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年3月10日