けいめいとかぐらと
鶏鳴と神楽と

冒頭文

には鳥は かけろと鳴きぬなり。起きよ。おきよ。我がひと夜妻。人もこそ見れ(催馬楽) 此歌などが、わが国の恋歌に出て来る鶏の扱ひ方の、岐れ目であるらしい気がする。平安朝以後の鶏に関聯したものは、どれもこれも「きつにはめなむ」(勢語)と憎んだ東女を、権輿に仰いで来た様である。其と言ふのが、刺戟のない宮廷生活に馴れた男女の官吏たちは、恋愛以外には、すべての感覚の窓を閉した様な暮しをつゞけて居た。歌

文字遣い

新字旧仮名

初出

「やまと新聞」1920(大正9)年1月

底本

  • 折口信夫全集 2
  • 中央公論社
  • 1995(平成7)年3月10日