ちょうしゅうゼロのこうえんかい |
聴衆0の講演会 |
冒頭文
夢のような終戦、疎開先から帰る荷馬車のほこりっぽい街、内海の潮の香のただよう尾道市の図書館の暗い部屋で、私は、何となく「暗澹」という文字を胸に書いてみた。 何処から、このごみごみした尾道市に、文化運動として、手をつけてよいのか。 十月四日治安維持法が断ち切られて最初の日曜日、十月七日、私はやむにやまれぬ心持でまず講演会を開いたのであった。日曜日の毎週朝九時からは学生を対象として
文字遣い
新字新仮名
初出
「朝日評論」1950(昭和25)年4月
底本
- 論理とその実践――組織論から図書館像へ――
- てんびん社
- 1972(昭和47)年11月20日