えいがのもつぶんぽう
映画のもつ文法

冒頭文

すべての民族の言語が、文法をそれぞれもっているのをみて、私はいつも考えさせられるのである。誰もこれをつくる約束の会議を開いたのでもないのに、ちょうど水晶が結晶をつくるように、精密な一つの法則をつくっていく。人間社会も、宇宙の大きな旅路の中の、一つの、生成しつつある結晶体のように思えてならない。 かく考えてみれば、歴史も、また大きな詩の流れでもある。私は映画が、この二十世紀の前半に発生し、

文字遣い

新字新仮名

初出

「読書春秋」1950(昭和25)年9月号

底本

  • 中井正一全集 第三巻 現代芸術の空間
  • 美術出版社
  • 1981(昭和56)年5月25日