「みること」のいみ
「見ること」の意味

冒頭文

見るということは、光の物理作用と、眼の知覚作用の総合作用だと誰でも考えているし、またそれにちがいはない。素朴的にいわば客観を主観にうつしとる作用だという考えかたである。しかし、このうつすということも、考えだせばかぎりもない複雑なことを含んでいるのである。「うつす」という言葉には大体、映す、移す、といったように、一つの場所にあるものを、ほかの場所に移動しまたは射影して、しかも両者が等値的な関連をもっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「国民芸術」1937(昭和12)年4月号

底本

  • 中井正一全集 第三巻 現代芸術の空間
  • 美術出版社
  • 1981(昭和56)年5月25日