やねうらのはんにん ――『ねずみのふみづかい』より――
屋根裏の犯人 ――『鼠の文づかい』より――

冒頭文

晦日風呂 その日は大晦日です。何者か戸を叩く音に、ヤモメ暮しの気易さ、午(ひる)ちかくまで寝ていた医者の妙庵先生、起きて戸をあけると、 「エエ、伊勢屋源兵衛から参りましたが、本日はお風呂をたてましたので例年の通り御案内にあがりました。どうぞお運び下さいまし」 「では本日は伊勢屋の煤はらいか」 「ヘエ、左様で。例年は十二月の十三日に行う慣(なら)いでしたが、当年に限って忙しかった

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 第二九巻第二号」1953(昭和28)年1月15日

底本

  • 坂口安吾全集 13
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年2月20日