はんにん |
犯人 |
冒頭文
その山奥の村に殺人事件があった。被害者は日蓮の女行者でサヨといった。 人見医師は駐在の里村巡査にたのまれて一しょに現場へ行った。役場や駐在所や医院などのある村の中心部から山を一ツ越した部落で、その部落でも一番端れの山際に孤立した傾いた小屋がサヨの住居であった。 小屋の内部は、土間と、板の間にムシロをしいた一間と、それだけしかなかった。サヨはムシロじきの板の間のほぼ中央に、全裸の
文字遣い
新字新仮名
初出
「群像 第八巻第一号」1953(昭和28)年1月1日
底本
- 坂口安吾全集 13
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年2月20日