あんごじんせいあんない 06 そのろく くらいかな とうようよ
安吾人生案内 06 その六 暗い哉 東洋よ

冒頭文

奈汝何  節山居士 抑々(そもそも)男女室に居るは人の大倫であり、鰥寡(かんか)孤独は四海の窮民である。天下に窮民なく、人々家庭の楽あるは太平の恵沢である。家に良妻ある程幸福はない。私の前妻節子は佐原伊能氏の娘で、実に貞淑であり、私の成功は一にその内助に依り、その上二男三女を設けて立派に嫁婚を了えた。憾(うら)むらくは金婚式を拳ぐるに至らず、私の為に末期の水を取ると臨終の際まで言いつ

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物 第六巻第一〇号」1951(昭和26)年10月1日

底本

  • 坂口安吾全集 11
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年12月20日