あんごのしんにほんちり 05 きえうせたさばく―おおしまのまき――
安吾の新日本地理 05 消え失せた沙漠―大島の巻――

冒頭文

この正月元旦に大島上空を飛行機で通過したとき(高度は三千メートルぐらいだったらしい)内輪山の斜面を熔岩が二本半、黒い飴ン棒のように垂れていただけであった。くすんだ銀色の沙漠はまだ昔のままであった。だいたい機上から見下した山というものは、およそ美しくないものです。ただ無限のヒダやシワがあるだけで、山の高度も山の姿も存在しないのです。ところが大島だけは、そうではない。黒い火口があって、内輪山の斜面を垂

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二九巻第九号」1951(昭和26)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 11
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年12月20日