わがくふうせるオジヤ
わが工夫せるオジヤ

冒頭文

私は今から二ヶ月ほど前に胃から黒い血をはいた。時しも天下は追放解除旋風で多量のアルコールが旋風のエネルギーと化しつつあった時で、私はその旋風には深い関係はなかったが、新聞小説を書きあげて、その解放によって若干の小旋風と化する喜びにひたった。その結果が、人間に幾つもあるわけではない胃を酷使したことになったのである。 私は子供の時から胃が弱い。長じて酒をのむに及んで、胃弱のせいで、むしろ健康

文字遣い

新字新仮名

初出

「美しい暮しの手帖 第一一号」1951(昭和26)年2月1日

底本

  • 坂口安吾全集 11
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年12月20日