しんしゅん・にほんのそらをとぶ
新春・日本の空を飛ぶ

冒頭文

元旦正午、DC四型四発機は滑走路を走りだした。ニコニコと親切な米人のエアガールが外套を預る。真冬の四千メートルの高空を二〇度の適温で旅行させてくれる。落下傘や酸素吸入器など前世紀的なものはここには存在しない。爆音も有って無きが如く、普通に会話ができるのは流石(さすが)である。 読売社の年賀状をまくために高度六百メートルで東京を二周する。神宮と後楽園の運動場が意外に大きい。ビルディングは小

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞 第二六五九六号」1951(昭和26)年1月3日

底本

  • 坂口安吾全集 11
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年12月20日