れきしとげんじつ
歴史と現実

冒頭文

以前新井白石の「西洋紀聞」によつてシドチの潜入に就て小説を書いたとき、屋久島はどんな島かしらと考へた。切支丹(キリシタン)の事蹟を辿つて天草までは行つたが、屋久島は行かなかつた。幸ひこの小説は島の風物を叙述する必要がなかつたので史料の記事だけで間に合つたが、後日、深田久弥氏の屋久島旅行記を読んで、驚いた。屋久島は千七百米(メートル)の巨大な山塊で、全島すべて千年から千五百年を経た神代杉の密林ださう

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京新聞 第四九二号」1944(昭和19)年2月8日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日