てっぽう |
鉄砲 |
冒頭文
天文十二年八月二十五日(四百一年前)乗員百余名をのせた支那船が種子ヶ島に漂着した。言葉は通じなかつたが、五峯といふ明(みん)の儒生が乗つてゐて筆談を交すことができた。ところが、船中に特に異様な二名の人物がゐる。一人をフランシスコ、他をダ・モータと云ひ、ポルトガルの商人で、この両名が各自その手に不思議な一物をブラ下げてゐた。 一物の長さは二三尺。中央を孔が通つてゐる。非常に重い。火を通じる
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸 第一二巻第二号」1944(昭和19)年2月1日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日