くろだじょすい |
黒田如水 |
冒頭文
小田原陣 一 天正十八年真夏のひざかりであつた。小田原は北条征伐の最中で、秀吉二十六万の大軍が箱根足柄の山、相模の平野、海上一面に包囲陣をしいてゐる。その徳川陣屋で、家康と黒田如水が会談した。この二人が顔を合せたのはこの日が始まり。いはゞ豊臣家滅亡の楔が一本打たれたのだが、石垣山で淀君と遊んでゐた秀吉はそんなことは知らなかつた。 秀吉が最も怖れた人物は言ふまでもなく家
文字遣い
新字旧仮名
初出
「現代文学 第七巻第一号」大観堂、1943(昭和18)年12月28日
底本
- 坂口安吾全集 03
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月20日